借金とうつ病|2億の負債を抱えて壊れた心と、回復までの道のり
借金の問題は、お金の問題だけじゃない。心の問題でもある。
僕は2億円の負債を抱えて自己破産をした。その過程で、うつ病になった。お金がなくなることよりも、心が壊れることの方がずっと怖かった。
これは、借金で心が壊れて、そこから少しずつ回復していった記録だ。
借金が心を蝕むメカニズム
借金の問題が精神的にキツいのは、「終わりが見えない」からだと思う。
毎月の返済をしても元本がほとんど減らない。利息だけで何十万も取られて、「一生返せないんじゃないか」という絶望感に襲われる。
しかも、借金のことは人に言えない。家族にも、友人にも、同僚にも。一人で抱え込むしかない。この孤独感が、精神的な負荷を倍増させる。
僕の場合、事業の負債だったので額が大きかった。毎月の返済額が数百万円。売上が落ちて返済が回らなくなった時、文字通り「詰んだ」と思った。
症状の始まり
最初の兆候は「眠れない」だった。
布団に入っても、頭の中で数字がぐるぐる回る。「来月の支払いが300万、でも口座に150万しかない、あと150万をどうする」。そんなことを延々と考えてしまう。
夜中の3時に目が覚めて、そこから眠れない。朝になっても体が重くて起き上がれない。でも、起きなければ仕事に行けない。返済のために稼がなければならない。
次に来たのは「食欲がなくなる」。食べ物を見ても何も感じない。味もしない。体重が10キロ以上落ちた。
そして、「何もやる気が出ない」。仕事のメールを開くのが怖い。電話が鳴ると心臓がバクバクする。人と会うのが嫌になった。
心療内科を受診するまで
「自分はうつ病かもしれない」と思ってはいた。でも、病院に行く気力がなかった。というか、「病院に行く時間があるなら稼がないと」と思っていた。
限界が来たのは、ある朝、本当に体が動かなくなった日だ。布団から出られない。頭では「起きなければ」と分かっているのに、体が言うことを聞かない。
嫁が心配して、半ば強引に心療内科の予約を取ってくれた。自分一人だったら、病院に行くという判断すらできなかったと思う。
診断と治療
心療内科で「うつ病」と診断された。先生は「よく来てくれましたね」と言ってくれた。
治療は主に2つ。薬物療法とカウンセリング。
薬物療法
抗うつ薬(SSRI)を処方された。「効果が出るまで2-3週間かかります」と言われた。
最初の1-2週間は、正直、副作用の方がキツかった。吐き気、めまい、だるさ。「本当に効くのか」と不安だった。
3週間目くらいから、少しずつ変化を感じた。「最悪の状態」から少し浮上した感覚。朝起きられるようになった。食事も少しずつ取れるようになった。
劇的に良くなったわけじゃない。でも、「底」から少し上がった。それだけで十分ありがたかった。
カウンセリング
週1回のカウンセリングも並行して受けた。
カウンセラーの前では、借金のこと、事業の失敗のこと、自分を責める気持ち、すべてを話せた。普段は誰にも言えないことを、安全な場所で吐き出せる。これは大きかった。
カウンセラーは「あなたが悪いわけじゃない」とは言わなかった。代わりに「今の状況を整理しましょう」と言ってくれた。感情的に寄り添うのではなく、冷静に状況を俯瞰する手助けをしてくれた。
自己破産とメンタルの関係
弁護士に自己破産の依頼をして、受任通知が出た瞬間、電話の着信が止まった。
これは本当に大きかった。毎日のように鳴っていた督促の電話。あの電話のたびに胃が痛くなり、心臓がバクバクしていた。それが、ピタッと止まった。
「もう電話は来ないんだ」と分かった時、涙が出た。安堵の涙だった。
ただ、自己破産の手続き中は別の精神的負荷がある。「自分は破産する人間だ」という自責感。社会的な恥ずかしさ。将来への不安。
うつ病の治療と自己破産の手続きを同時に進めるのは、正直かなりしんどかった。でも、弁護士が手続きを進めてくれるので、自分は最低限のことをするだけで良かった。
回復のきっかけ
免責が降りて、法的に借金がなくなった。でも、心は簡単には回復しなかった。
何もする気が起きない日々が続いた。テレビを見ても、本を読んでも、何も頭に入ってこない。生産的なことが一切できない。そんな自分がさらに嫌になる。悪循環だった。
転機は、本当にたまたまだった。
暇つぶしでTikTokを見ていて、「ライブ配信」という機能があることを知った。なんとなく試しにやってみた。最初は画面に向かって独り言を言っているような感覚だった。
数人が見に来てくれて、コメントをくれた。他愛もない会話。でも、その「人とつながっている感覚」が、久しぶりに心地よかった。
それから、毎日のように配信するようになった。自分の体験を話すこともあった。すると「自分も借金で苦しんでいる」「話を聞いて少し楽になった」というコメントが来た。
「僕の体験が、誰かの役に立っている」。この感覚が、回復の大きなきっかけだった。
今の状態
うつ病が完全に治ったかと聞かれると、正直分からない。波はある。調子のいい日もあれば、何もできない日もある。
でも、「最悪の状態」からは確実に抜け出せた。薬の量も減った。カウンセリングの頻度も減らせた。
嫁と二人の生活は穏やかだ。借金がないだけで、こんなに心が軽いんだと実感する。
借金で苦しんでいる人へ
もし今、借金で精神的に追い詰められているなら、伝えたいことがある。
まず、心療内科に行ってほしい。「借金の問題であって、病気じゃない」と思うかもしれない。でも、眠れない、食欲がない、やる気が出ない、といった状態が2週間以上続いているなら、それはうつ病の可能性がある。
うつ病は「気の持ちよう」で治るものじゃない。適切な治療が必要だ。恥ずかしいことでもない。風邪をひいたら病院に行くのと同じ。
そして、借金の問題は弁護士に相談してほしい。一人で抱え込まないでほしい。専門家に相談するだけで、状況は確実に変わる。
借金は人生の終わりじゃない。心が壊れても、回復する道はある。僕がその証拠だ。
時間はかかる。でも、必ず良くなる。だから、今日だけでいい。今日一日を生き延びてほしい。